ヒトはいつから入浴していた?
日本人は温泉好き
温泉が好きな日本人は95%以上。
こんなアンケート結果があるのをご存知でしょうか。
2012年10月、オンラインストレージサービス「宅ファイル便」(エルネット運営)ユーザを対象に実施された温泉に関するアンケート。
「温泉は好きですか?」と尋ねたところ、「好き」または「やや好き」と回答した割合が、すべての年代で95%以上だったそうです。
それもその筈。日本には天然の温泉が、源泉も入れて2,200以上あるといわれています。
日々の疲れを癒すため温泉宿に出かけたり、自宅のお風呂を温泉の香りにしてみたりと、私たち日本人は様々な方法で入浴を楽しんでいますね。
縄文人だって温泉好き
そんな日本人は、いったいいつごろから入浴をしていたのでしょうか。
実は、約6,000年前の縄文時代の頃には地中から湧いた湯に入っていたといわれているのです。
考古学者である藤森栄一氏が行った長野・上諏訪駅前の土地の発掘調査で、縄文前期に使われていた土器片の発掘された層に、その痕跡を発見しています。
「地下5.5メートルの真っ黒な有機上層で、大石がごろごろと、ほぼ環状にならんだところがあった。硫化物の臭いが鼻をうった。硫黄質の湯が湧いていたことは確実である」(藤森栄一全集・第四巻)
「6メートル下のスクモ層下に大きな岩石が累々とあって、そのまわりは明瞭にかつて湯が湧いていたことを示す湯アカがいっぱい。・・・調査員はそのどろどろの、いまも硫黄臭と鉄のくさったような湯の匂いのただよう岩のそばで、思わず―湯に入っていたんだ―とつぶやいたのである」(藤森栄一『縄文の世界』)
この発掘調査地だけでなく、日本全国に散在する遺跡には、現在の温泉近くに存在するものも少なくありません。私たち日本人が日常的に、何らかの形で温泉とかかわって生きてきたことが想像できると思いませんか。
気分はお風呂の歴史学者!
私たちが湯船に浸かって、はぁ~っと声を出してリラックスする気持ちよさを、太古の人たちも同じように感じていたのかもしれません。
温泉・入浴、とても日常的なキーワードなのに、なんだか太古の人々に思いを馳せる歴史学者になったような気分ですね。
なんだか温泉に浸かりたくなってきたと思いませんか。
本当は山奥の秘境の、まるで太古の森に迷い込んだような温泉に入りたいけれど、それはまた今度じっくりと計画しましょう。
私たちには太古の生活にはなかった、家のお風呂があるんですから。
今夜は、無添加の「なつ風呂」で自然の香りに包まれながら、太古のロマンと共に浸る入浴、なんていかがでしょうか。
(参考文献)
『洗う その文化と石けん・洗剤』 藤井徹也著 / 『温泉と日本人』 八岩まどか著